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“どうせ頭を使うなら、楽しくできるかってことを考えたい。”▶︎▷▶︎【本紹介】大人は泣かないと思っていた/寺地はるな

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📚大人は泣かないと思っていた/寺地はるな


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第1章
山に囲まれた田舎といえるところで生まれ育った主人公の時田翼。酒飲みで小言の多い父と2人暮らしでお菓子作りを趣味とする32歳。
そんな時田家の庭のゆずが盗まれるところから物語は始まる。
隣家には一人暮らしをする高齢の田中絹江と、その介護に訪れていた孫の小柳レモン。

翼は「ゆず泥棒」の一件をきっかけにこれまで深く関わろうとしなかった絹江の暮らし振りを知り、レモンのまっすぐな生き方に心を動かされる。

 

第2章
小柳レモンの物語
再婚した家族の在り方に悩み、また母の入院中に自身の家で血のつながらない父と暮らすことで、周囲から好奇の視線で見られ勝手に想像で家を語っていく町に窮屈だと感じている
家を出ようと決意した先の晩、義父話すと「家族の在り方」について語られていくー。

 

第3章
時田翼の小学校からの友達、時田鉄也の物語
“男らしさ”を求められる家庭で育ち、家の中でも“男は前に立ち、女は後ろ”というような環境であった。そんな折、結婚したいと思う相手と実家に行くことから物語は色濃くなる。男らしさ、女らしさが全開に語られた一節。

 

第4章
時田翼の母親の物語
40代で離婚をし家を出て、友人と小さな会社を設立した。
夫との出会い、夫の親族との関係性、そしてここでも出てくる“〇〇らしさ”、夫への想いー。
息子である時田翼との関わりを通して時田家家族の「らしさ」からの解放と、「こうあるべき」という捉え方からの解放が綴られていく。

 

第5章
時田翼の職場の同僚である平野貴美恵の物語
結婚を控えた同期の亜衣との関わりを通して、自身の結婚への思いや世間体との葛藤を描く。妥当というkeyワードから見えてくる本当の姿とはー。

 

第6章
時田翼の親友、鉄也の父親の物語
第3章で少し垣間見えた哲也の家庭の様子から少し深掘りされ、友人の父親という視点で描かれている。
彼もまた、男らしく生きることを強いられてきた人である。
時代は変わっていくのに、自分は変われないー。
そんな葛藤を抱く鉄也の父と、鉄也の婚約者に会い姿勢が変わった妻の2人の掛け合いから見えてくる出口とはー。

 

第7章
各章ごと、さまざまな人物の視点と共に進んでいった物語の最終章。もう1度時田翼の視点に返り、病床に伏している父と自身の日々に徐々にいっぱいになりながら、父からの言葉と自身の想いに刺されていく。
翼の性格とこれからの未来、そして周りの想い。
ひとつづつ紐解かれていくような最終章の幕引き
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🌱言葉

血が繋がったってさ、他人だよ。
親子になるのだって、きょうだいになるんだって偶然だよ。
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生きていくのは大事業だよ。
その事業が継続できるならさ、どんな編成だっていいんだよ。
お母さんが3人いたって、夫婦2人だけだって、
こどもが20人いたって、全員に血の繋がりがなくたって、うまく言ってるならいいと思うんだよ。
もちろん、ひとりだってさ。
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なんでも『わからん』で済ませるな
わからないことはいっぱいあるよ。
わからないで済ませるしかない時だっていっぱいあるよ。
でもせめて、わかろうとしろよ。
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言いたくないことは黙っていればいい。
誰にでも「普通で明るく」を強要してはいけない。
それはもう、暴力だ。
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お母さんは、自分は逃げた、あの家を捨てた
と思っているかもしれないけど、違うから。
離婚したいっていうお母さんの意思を受け入れたのはお父さんの意思なんだ。

それと同じ。
あの家で暮らし続けることを俺は、選んでいるんだよ。
自分で。自分の意思で。
多分、お母さんや世間の人が想像しているような惨めな暮らしをしているわけじゃないって言いたかったんだ。
32歳の息子と、78歳の父親の2人暮らしにだって
それなりに幸せな瞬間はあるんだよ。
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昔のことに対して罪悪感を抱えるんじゃなくて、
そうしてまで選び取ったものを大切にして生きてくれる方がいい、その方がずっといい。
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摘まれた花は、摘まれない花より早く枯れる。
でも、摘まれた花は咲いた場所とは違うところに行ける。
違う景色を見ることができる。
たとえ命が短くても。
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そんなのくだらないわ、自分は自分でしょ
そういえる人だっていっぱいいることは知っている。
私はだけどいつだって、「みんな」と同じ側にいたい。
向かい風の中をひとりで歩んでいくような生き方を私は望まない。

望まない人間に「常識なんてくだらない、もっと強くなれ」というのは価値観の押しつけでしかないのだ。
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去っていかれた方の人間が『忘れる』をやり遂げるのは大仕事です。
そこに至るまでに、何度も泣いたかもしれない。
どんな経過を辿ってその傷が治ったかは、傷を負った本人にしか知りません。
他人が、治療後の姿だけを見て語るもんじゃない。

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▽▼▽寺地はるなさん作品▽▼▽