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“あなたは誰かと自分を比べて、ずっと揺れていたのよー。”▷▶︎▷【本紹介】サラバ!/西加奈子

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📚サラバ!/西加奈子

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【概要】
この本は、主人公である(圷歩:あくつ あゆむ)の37歳までの人生を書いた自叙伝である。
物語は“家族”を中心に描いた作品であり、
自己中心的と言えるほど自分の感覚に正直な母、背が高く優しい父、奇抜な行動を繰り返し周囲の手に負えない姉。
そんな家族と共に育った歩の視点。
特に姉はとてつもなく強烈なキャラクターとして描かれる。▽▼▽

⚪️弟が生まれるにあたり母が産気づいた時、「スルッと生まれるように」と必死に祈り目玉焼きを焼くお手伝いのバツール(バツール流のおまじない)を見て、バツールが焼いた目玉焼きを1枚1枚床に並べ、その上を歩くという暴挙に出る姉

⚪️父が姉へと買って来た狼のぬいぐるみ(渡された時は父が引くほど喜び叫んだ贈り物)を早々に土に埋め、葬式ごっこを行う姉。他にも家の品々が埋められた。

⚪️家の壁、さらには天井にまでゴリゴリと巻貝の絵を掘り、外に出れば巻貝アーティストとして視線を集める姉

 

だがしかし、物語を通して描かれていた数々の姉の奇抜な行動には姉なりの思いと葛藤があった。

 

物語の始まりには姉に振り回されながらも順調に進んでいた歩の人生は、成長し年を重ねるにつれて落ちていき、
一方、もがきながら歩んできた姉の人生は花開くことにー。

 

この物語は1人の男の人生を通して
家族、人間関係、アイデンティティ、マイノリティ、信仰、芸術、社会的出来事、ジェンダー、恋愛、言語、コンプレックス、表現など、さまざまなツールが盛り込まれた作品。
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🌱言葉

ヨガって、いろんなポーズがあるでしょう。
そのどれも、体の幹がしっかりしていないとできないの。
バランスが大切なのよね。
そのバランスを保つのにも、体の芯、その、幹のようなものがしっかりしていないとダメなの。体を貫く幹が。
幹。私が見つけたのは、信じたのは、
その幹みたいなものなの。
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芯を持ちなさい。
自分だけが信じられるものよ。

あなたはいつも何かに怯えていた。特に私に。
あなたは私ばかりを見てたわ。
確かに私は、いろいろなものを信じた。
そして傷つき、打ちのめされてきた。
でもね、私は少なくとも、信じようとしたのよ。
あなたは違う。何かを信じようとしてこなかった。
あなたは誰かと自分を比べて、ずっと揺れていたのよ。
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あなたも、信じるものを見つけなさい。
あなただけが信じられるものを。
他の誰かと比べてはだめ。もちろん私とも、家族とも、友達ともよ。あなたはあなたなの。あなたは、あなたでしかないのよ。

あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。
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私には、余白が一切なかった。
それはわかってほしいのです。
そして、今のわたしに余白ができたから、その余白の部分であなたを愛しているとは、思わないでほしいのです。
おかしな言い方だけど、自分に余白がなかったのは、
自分に余白なんてないと気づくことができなかったらからなのです。
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自分の人生は、誰かの人生ではないの。
そして誰かの人生も、自分の人生ではない。
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私はずっと、お母さんに愛されたかった。
でもそれは、他の子供と同じように、ではなかった。じゃあどうゆう風に愛されたいのか、自分でも分からなかった。
私はずっともどかしかった。 私は私が分からなかった。
私のことを、まるのまま私だと受け入れることができなかった。だからお母さんも、そんな私の愛し方をわからなかったのよ。
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私は私を信じる。
私が私でい続けたことを、信じているの。
だからもしもそれが間違いだったとしても、もう私は壊れないわ。私は誰かに騙されていなわけでもない、誰かに任せていたわけでもない。
私は私の信じるものを、誰にも決めさせはしないの。
私はあなたを愛している。
それは絶対に揺るがない。あなたを信じているからではない。あなたを愛している私自身を、信じているからよ。
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これを読んでいるあなたには、この物語の中で、あなたの信じるものを見つけてほしいと思っている。
ここに書かれている出来事のいくつかは嘘だし、もしかしたらすべてが嘘かもしれない。
登場する人物の幾人かは創作だし、すべての人が存在しないかもしれない。
僕には姉などいなくって、僕の両親は離婚しておらず、そもそも僕は、男でもないかもしれない。
あなたは、あなたの信じるものを見つけてほしい。
そして、この物語に、信じるものを見つけることができなかったのであれば、他の物語を読んでほしい。この世界には、数えきれないほどの素晴らしい物語が存在している。
何を信じるのかは、いつだって、あなたに委ねられているのだ。恥ずかしいが、姉の言葉をここで引用したい。

あなたの信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。