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“渦中の苦しみを思い、想像するっていうことは、心を、想いを馳せるということだ”▶︎▷▶︎【本紹介】i/西加奈子

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📚 i /西加奈子


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【概要】
天災、戦争、抗えない環境。。。

そんないわれもない悲しい現状が、今も世界のどこかで続いている。
今、この瞬間に被害に遭っている人がいる。
命を落としている人がいる。

そう考えると、自分が平和で
なに不自由ない環境にいることに、罪悪感を感じそうになる。

ならばせめて、
苦しんでいる人たちのことを想いやろうと思うけれど

安全な場所にいる自分には、
心配する権利すらないのではないだろうか
という気がしてくる。

さらには、恵まれている自分には、
苦しいと声に出すことが、許されないのではないかなんて思える。

「もっと苦しい人がいるんだぞ」と、言われる気がする。

でも、実際は、
自分自身の幸福を大切に思う気持ちと、
他者を思いやる気持ちは、矛盾しない。

何気ない日常に感謝する気持ちと、
明日の生活もままならない人たちを想う気持ちは、
一緒に抱えてていい。

私たちは、自分自身の幸せを願いながら、
今、世界で起きている悲惨な出来事について、
知り、語り、思いやることができる。
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🌱言葉

僕は罪そのものを見ていた。
彼がやったことではなく、罪そのものを見て、
それで許さないって思っていた。
でも、彼がどうして罪を犯したのか、罪を犯さざるを得なかったのか、それを考えてあげることができなかった。

例えば、誰かを殴ってしまうこと。
それは絶対にいけないことよね。
でも、殴るという行為そのものだけにフォーカスして
それを糾弾するのではなく、どうしてその人が殴ったのかを考えてあげないといけない。
暴力それ自体は絶対にいけないことだけど、
そこに至る経緯はそれぞれだものね。
殴りたくない人だっていたでしょうし、
どうしようもなく殴らざるをえなかった人もいる。
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私は、中絶をする人は誰にも謝ることはないと思ってる。
社会に対しても、不妊で苦しむ人に対しても、謝る必要はないと思ってる。
私の決意と、みんなのからだのことは別のことだから。
その人のからだは社会のためにあるんじゃない、
子どもができない人のためにあるんでもない。
その人の命のためにあるんだって、そう思ってる。
わたしのからだは、わたしのものだから。
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毎日人が死んでいるのは、
それも数万人単位で死んでいることは間違いがないのに、
自分たちの近くで起こらなければ、
それはなかったことと同じになる。
誰かがどこかで死んでも、空が割れるわけでもなく、
血の雨が降るわけでもない。世界はただただ平穏だ。
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ずっと、免れてきたと思ってた。
どうして、私じゃなかったんだろうって。
(中略)
どうして死んだ人が私じゃなくて
その人たちなんだったんだろう。
その人と私の違いはなんだろうって。
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私は「苦しい」と言っていいのだろうか。
いわれのない、「本当の苦しみ」を
苦しんでいる人たちがいる世界で?
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誰かのことを思って苦しいのなら、
どれだけ自分が非力でも苦しむべきだと、私は思う。
その苦しみを、大切にすべきだって。

渦中の人しか苦しみを語ってはいけないなんてことはないと思う。もちろん、興味本位や冷やかしで彼らの気持ちを踏みにじるべきではない。絶対に。
でも、渦中にいなくても、
その人たちのことを思って苦しんでいいと思う。
その苦しみが広がって、知らなかった誰かが想像する余地になるんだと思う。渦中の苦しみを。
それがどうゆうことなのか、想像でしかないけれど、
それに実際の力はないかもしれないけれど、
想像するってことは心を、想いを寄せることだ。

(あとがき)
アイちゃんは確かに恵まれている。
虐げられている人は、もちろんしんどいけど恵まれている人は悩んだらあかんような風潮もあるじゃないですか。
「お前ぐらいで文句を言うなよ」って。
人それぞれの痛みや苦しみって数値化して比べられない。
だから自分の痛みはきちんと痛みとして受け止めながら周りの人の気持ちも理解できるようになればいいんだけど。
でも、「もっとたいへんな人、おんねんぞ」って。
苦しむことすらできない人がつくられている。
いや、血ぃ、出てるよ?なんで痛がったらいかんねんって思う。

自分の幸せを願う気持ちと
その世界の誰かを思いやる気持ちは矛盾しない

 

その他、西加奈子さん作品▽▼▽