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“今住んでいる世界だけが、私の住む場所とは限らないー。”▶︎▷▶︎【本紹介】両手にトカレフ/ブレンディみかこ

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📚両手にトカレフ


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【概要】
寒い冬の朝、14歳のミアは、短くなった制服のスカートを穿き、図書館の前に立っていた。
そこで出合ったのは、カネコフミコの自伝。
フミコは「別の世界」を見ることができる稀有な人だったという。本を夢中で読み進めるうち、ミアは同級生の誰よりもフミコが近くに感じられた
一方、学校では自分の重い現実を誰にも話してはいけないと思っていた。けれど、同級生のウィルにラップのリリックを書いてほしいと頼まれたことで、彼女の「世界」は少しずつ変わり始める――。

 

生活保護のお金を薬物に遣ってしまうミアの母。
まだ幼く、いじめられっ子である弟、貧しい人のためのボランティアをしており一家を気にかけてくれるゾーイ、、、
さまざまな人物が登場と共にフミコの自伝が差しはさまれ、物語は進行する。
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🌱言葉

この母を私は選んでいない。
母が連れてくる男たちだって私は選んでいない。
こどもには何も選べない。

もう悲しいとは思わなかった。
ただ、私は悔しかった。
自分が子どもであることが、自分では何一つ選べないことが猛烈に悔しかった。
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悪気はないんだ、
微塵も悪気はないのだけれど
ただ、この人たちにはこちら側のことはわからない。
だからこちらの方でも、嫌うとか、憎むとか、
そんな強い感情は抱かない。
ただ、住んでいる世界が違う。それだけだ。
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私は私だ。
私の価値を決めるのは私。
それを外側から上げ下げする人間がいるのはムカつく。
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私は、母親のように諦めたくなかった。
何かを望むことをやめて、仕方がないと我慢して生きるより、ここと違う世界はあると想像する方を選びたい。
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「もう決してこんなことはしないと誓いますー。」

本当に子どもに責任の概念を教えようと思うなら
子どもの行為を大人が決めて、子どもに誓わせてはいけない。
子どもの行為の責任は子ども自身にある。
それを取り上げてしまったら、
子どもには自分の行為の主体が誰にあるのかわからなくなる。
自分が誰を生きているのかわからなくなる。
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何度も失敗したから今度もダメということはない
いつかうまくいくこともある。
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子どもの頃、私を助けてくれた大人たちがいた。
だから、大人になった私にも、あなたを助けさせてくれないかな。
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しっかりしている子が傷ついていないというわけではない。
それでも、声を出して話してくれないとこちら側にはわからない。
ああゆう子に武装解除させるには時間がかかるのよ。
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祈ったところで何も変わらない。
起きたことはもう変えられない。
だったら、自分でこれから起きることを変えるしかない。
泣いたって脅えたって誰も私たちを助けてくれない。
逃げるしかない。
もう私たちを大人の好きにはさせない。

泣きながら憐んでいても仕方がないのだ。
私のような子どもは自分でなんとかするしかないのだ。
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僕に君のことなんかわかるはずがない。
でも、わからないから知りたい。
わからない言葉の意味を少しでもわかるようになりたい。
わかるための努力をしたい。
だって人間は、わからないことをわかるようになりながら生きているものだよね?
だから、僕がそうできるように助けてくれないかな。
もちろん、僕も君を助ける。
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これほどの美しいものたちに私は別れを告げようとしている。
今飛べば、折檻や空腹からは逃れられる。
だけど、それでも世界にはまだ美しいものがたくさんある。
まだ見ぬもの、私が知らないものが無数にある。
いま住んでいる世界だけが私の住む場所とは限らない。
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私は空を見上げて瞳を閉じた。
母や父や妹や弟、山梨の人々、これまで出会い、別れてきた人々が生きている世界がこの空の下にあった。
ならば、まだ出会ったことのない人々もこの空の下に存在し、確かにこの瞬間を生きている。
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私は死ぬわけにはいかない。
まだ知らないたくさんのことを知るまで、
まだ出会っていない人々と出会うまで生きなければいけない。
いま、この広い空の下には、
私と同じように泣いている人たちだっているだろう。
虐げられている人たちもいるだろう。
私はその人たちに伝えなければならない。

ここじゃない世界はいまここにあり、
ここから広がっている。 

別の世界は、存在する。
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あなたはもう何もしなくていいの。
見ないふりをせずに、言い訳をせずに、
何かをしなくてはいけないのは大人たちの方だからー。
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ここじゃない世界に行きたいと思っていたのに、
世界はまだここで続いている。
でも、それは前とは違っている。
たぶん世界はここから、

私たちがいるこの場所から変わって、

こことは違う世界になるのかもしれないね。

だとしたら、ここにある世界は変えられる。

▽▼▽ブレンディみかこさん作品▽▼▽